ヨーク大学日本語科三学年読解教材
構文と演習:「力の世界」
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[構文]
@ ...てから、 〜 ほど[ぐらい]経ったある日、...ことがあった。 
    1. 大阪でトラックの運転手を始めてから、二ヶ月ほど経ったある日、仲間の運転手と
       仕事がいっしょになったことがあった。
    2. アメリカに移ってから、半年ぐらい経ったある日、シカゴの学会に出たことがあった。
    3. その会社で働き始めてから、三ヶ月ほど経ったある日、社長のお供で飛行場に行った
       ことがあった。

A ...などとまことしやかに話した[まことしやかな嘘をついた]。
    1.「太田はすごいぜ。八十キロぐらいのを平気で三階まで担ぎ上げるんだから。」など
         とまことしやかに話したのである。
    2.友達は自分が大金持ちの孫であるなどとまことしやかな嘘をついた。
    3.ベトナム戦争中に戦火をくぐってきたなどとまことしやかな話をした。
 
B ここで一言付け加えておくと、...
     1. ここで一言付け加えておくと、他の運転手はみな筋骨隆々で、一番年上でも三十代で
        ある。
     2. ここで一言付け加えておくと、その時はまだ二十六歳で、管理者の経験などはなかっ
        たのである。
     3. ここで一言付け加えておくと、その時までは熊が出るなどと考えてもみなかったので
        ある。

C (もちろん)、...ので、〜というには程遠かったが、...
     1. もちろん、夏休みに東京でもトラックの運転手をしていたので、筋骨隆々というには
        程遠かったが、体力はついていたと思う。
     2. もちろん、経験不足なので、完全というには程遠かったが、自分なりに満足のいける
        仕事ができたと思う。
     3. もちろん、食材が限られていたので、大御馳走というには程遠かったが、けっこう食
        べられる料理が出せたと思う。

D ...た手前、後に引けなくなって、...という仕儀[こと・結末]になった。
       1. 私も、おだてられた手前、後に引けなくなって、一人一人と対戦する仕儀となった。
       2. 私も、大見得を切った手前、後に引けなくなって、このプロジェクトを引き受ける仕
          儀となった。
      3. こちらも他の人の批判をした手前、後に引けなくなって、自分でやる仕儀となった。
E 〜割に、というか、意外と〜のが ...(が、...)
      1. 私は、細い割に、というか、意外と細いのが腕相撲に強いのであるが、結構腕相撲に
         は自信があった。
      2. 学生は、大人しい割に、というか、意外と大人しいのが弁論大会などでがんばるもの
         である。
      3. 人は、頭がいい割に、というか、意外と不断頭がいいのが結構馬鹿な間違いを犯すも
         のである。
F こんなに...とは思ってもみなかったので、 ...
       1. こんなに勝つとは思ってもみなかったので、狐につままれたような気もした。
       2. 自分達の発表がこんなにうまくいくとは思ってもみなかったので、終わってから有頂
           天になった。
   3. 試験の結果がこんなにひどいとは思ってもみなかったので、ひどく落ち込んでしまっ
      た。
G ひょっとすると ...
       1. ひょっとすると皆わざと負けてくれたのかなあと思ったりしたが、ここは額面通りに
          受け止めることにした。
       2. ひょっとすると、彼女が待ち合わせの場所に来ないのではないかとも思ったが、一応
          行ってみることにした。
       3. ひょっとすると会社がつぶれるかもしれないと心配していたが、何とか大丈夫のよう
          である。
 
H ...だなという実感を強くした(ものである)。
        1. まだ力の世界があるのだなという実感を強くしたものである。
        2. 今でもこういう伝統を守っている人がいるのだなという実感を強くしたものである。
        3. こんな田舎にも立派な人がいるのだなという実感を強くしたものである。
 
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[演習]
 
I.次の質問に答えなさい。
1.「木村はん」はどんな人ですか。
 
2.運転手の元木さんと仕事がいっしょになった時筆者達はどんな仕事をしましたか。
 
3.「話に尾鰭をつける」とはどういうことですか。
 
4.筆者はなぜ「自分のような青白き学生の住む世界ではなかった」と言っていますか。
 
5.腕相撲の結果はどうでしたか。
 
6.腕相撲をした後、仲間の運転手の筆者への態度はどう変わりましたか。
 
7.「狐につままれたような気がする」というのはどういうことですか。
 
8.「額面通りに受け止める」というのはどういうことですか。
 
9.「仲間意識の有難味」について説明しなさい。
 
10.筆者はなぜ「こそばゆく」感じたのでしょうか.
 
U.この文章の中心的な主題は何でしょうか。
 
 
V.あなた自身も「力の世界」的な経験がありますか.皆で話し合ってみましょう.
 
 
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(C) Norio Ota 2000