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2004.8.19 《電気新聞》

焦 点

  ▼日本のマスコミは中国を「人件費の安い国、労働力の豊富な国」としか紹介していない、これでは表面的すぎる――。先日、本紙主催の「時事フォーラム」で講演した三井物産戦略研究所の沈才彬さんの話が評判だ

▼今、わが国で中国を語らせたらこの人の右に出る人はいないと言われるのが沈さんである。何といったって話が具体的だし面白い
▼中国は「工場としての側面と同時に市場としての側面」があるが、人件費や労働力の視点だけでは、工場としての中国を見るにしても不十分で、今の「躍進中国」を理解するには表面的すぎるという
▼変化する中国経済社会の深層底流にもっとスポットを当てるべきという沈さんによれば、中国エコノミックパワーには4つの秘密があるという。▽「ワーストワン淘汰制」▽幹部の若返り▽「バナナ族」の台頭▽産学連携の進展――の4つだ
▼ワーストワン淘汰制とは徹底した中国流の競争社会のことを指すらしい。若返りはどこも一緒だ。多くの成功企業のトップは40歳代で、政治や行政の世界にも若返りの波が押し寄せているという。また多くの成功企業は大学の研究室で芽を出し、巣立っているとも聞いた
▼この中で一寸耳慣れない言葉が「バナナ族」である。中国の経済界をリードしている若きエリートたちのことだ。皮は黄色いが中身が白いバナナに準えて、欧米に留学して市場経済を学んだ中国人のことをこう呼んでいるのだという
▼そういえばかつての日本にも似たような表現があった。「和魂漢才」や「和魂洋才」は発展期の日本を象徴する言葉としてしばしば用いられた。振り返ってバブル後の日本はどうか。グローバル化は日本を「無魂無才」にしてしまった。

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