(1)南アフリカの日本への期待
南アフリカの日本への期待は大きい。両国の関係強化や交流拡大がなるかどうかは、日本の出方にかかっている。距離が遠く、歴史的にも文化や人的交流が少ない両国間で「経済大国」と評される日本側からのメッセージやアプローチこそ、両国関係の大きな進展を導く。
南アフリカの日本への期待は何か? 南アフリカの人々は、よく日本のことを「革新に富んだ国、国民」と評価する。同時にドイツのことを「品質の国」、スイ
スを「精密の国」と評価する。戦後50年、日本やドイツなどの経済復興を裏付ける国民性を評価したものである。そして、「新生南アフリカの復興」には、こ
れらの要素が必要だとしている。特に、日本国民の勤勉さや努力がその国民性や伝統のみならず「教育」から由来するものも多く、日本人から学ぶべきことが多
いと思っている。今、「日本的システム」が大きく変化している中で、南アフリカのリーダーの人々にとって日本はまだまだ「革新性」に満ちている。
南ア政府や黒人資本を含む経済界からは日本の直接投資や技術移転、中小企業育成、輸出協力などさまざまな要求や要望がある。南アの周辺諸国経済開発にも協
力の要請がある。南アにとっての共同市場、地域経済圏であるSADC諸国への日本の協力・支援も南アにとって相乗的経済発展のために重要なことである。
南アの黒人(アフリカ人)リーダーにとって、白人には過去数百年にわたり彼らの伝統文化・技術そして精神文化までも抑え込まれたとの思いがある。同様に一
部の黒人リーダーには日本もアパルトヘイトの同調者との思いがある。また一方で日本人に「名誉白人」といった「不名誉な称号」を冠して申し訳なかったと謝
る黒人リーダーもいる。アフリカ人はまず、自らアフリカイズムや自尊心の回復が必要と説きつつ西洋文化との調和をいかに図るかに改めて苦心している。その
中で日本人の「和魂洋才」といった日本的文化が極めて新鮮に映っているようで、日本の役割が徐々に見えてくるようだ。
南ア経済は引き続き白人ビジネス資本で支えられている。南ア経済における白人と黒人の融合はまだ始まったばかり。既存の有力白人資本やその経営団体による
積極的な融合への努力が実り始めている。しかし、日本経済にとって、南ア経済との交流は「白人と黒人の融合」に時間をかける間もなくスタートを切ってお
り、その融合の早期達成のためにも、全体経済への関与を積極的に果たす必要がある。同時に、黒人経済・資本との交流の拡大が各種資源から産業分野までます
ますその重要性を増していることを認識しておく必要がある。
(2)日本のプレゼンスと交流
南アフリカに在住する日本人は約900人。その中心はヨハネスブルグ。日本の進出企業数は大小合わせ約60〜70社、このうち、日本商工会議所メンバーは
48社。上述のような、南アフリカの日本への期待を背負いつつ、個人として、また企業人として一人一人、日々、南アフリカとの交流の発展に向き合ってい
る。
歴史的に経済関係を除く交流に乏しい両国関係にあって、南アフリカの期待に応える
最大の近道は、やはり経済協力関係である。過去6年、日本の対南ア投資はわずか5億ドル。米国約30億ドル、マレーシア約15億ドル、イギリス約10億ド
ル、ドイツ約7億ドルにつぎ日本はやっと5位である。直接投資がすべての交流の尺度ではないが、経済関係の最大の尺度の一つである。直接投資のもたらす効
果は、資本導入に始まり、人的交流や技術導入から「日本的革新性」まで、南アフリカの求める日本への期待が詰まっている。直接投資については、南アフリカ
市場にいろいろな制約や障害もある。市場規模が小さい、労働生産性が悪く、コストが高い、品質管理に問題があるなどである。投資環境をどのように改善・改
良していくべきか、今後の両国の経済ビジネス交流の大きなテーマである。
日本政府の南
アフリカへの支援・協力も一層期待されている。ODAによる教育や医療・厚生・インフラ整備などから広くアフリカへの「人道的難民救済援助」や「紛争予
防」など「南アフリカとアフリカの再生」に欠かせない問題への積極的な貢献と関与が始まっている。2003年に開催が予定されている日本の対アフリカ支援
プログラムである「TICAD3」が注目されている。ムベキ大統領は「アフリカ再生」に向けてのTICAD3の役割を期待している。それまでの3年間、
「アフリカ再生」に向けてのアフリカの自助努力にも注目したい。そして、これらの経済交流を支える国民レベルの交流も欠かせない。
日本祭

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在南アフリカ日本大使館の主催する「ジャパンフェスティバル」や、南アフリカの日本人会・商工会の主催する恒例の行事「日本祭り」では、地域の人々との
文化交流を目的に日本の伝統文化(茶道・華道など)や伝統スポーツ(柔道・相撲・空手など)の紹介、日本映画週間や日本から伝統芸術家や音楽家などが来演
する多彩な催し物の開催など、南アフリカの人々の日本文化との交流の機会を広げている。
しかしながら、両国
民の往来がいまだ少なく、大きな課題である。日本からの訪問者は年間わずか2万人にすぎない。大自然に恵まれたこの美しい虹の国南アフリカに一人でも多く
の日本人の訪問が望まれる。南アフリカ政府も経済開発および雇用対策の観点から、観光開発を最大・最優先の国家事業の一つとしている。
ともあれ、アフリカ大陸の新しい夜明けとともに、「自由と人権の国」である日本の南アフリカとアフリカへの建設的関与が名実ともに始まった。それは長く忍耐のいる関与ではあるが、やり遂げる価値のある関与に違いない。